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6月の余韻|みたらい渓谷と、吉野川の蛍。
6月の奈良は、雨と緑の季節だ。 梅雨の晴れ間を選んで、天川村へ向かう。みたらい渓谷——エメラルドグリーンの淵と、大小の滝が連なる渓谷は、新緑のこの時期が、一年で最も水の色が鮮やかだと思う。 みたらい渓谷へ 天川川合を起点に、遊歩道を歩く。川沿いの道は木々が高く、日差しがまだらに差し込んでくる。ひんやりとした空気の中に、水の音だけがある。 吊り橋の上に出ると、眼下にみたらいの滝が見える。岩を割るように流れ落ちる水と、その下に広がる深い碧の淵。梅雨の雨を集めた川はいつもより勢いがあり、飛沫が顔まで届いた。橋の上でしばらく立ち止まって、ただその景色を見ていた。 新緑の季節が終わると、次は紅葉が待っている。11月上旬、全山が色づくみたらい渓谷の秋... -
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5月の余韻|長谷寺のぼたんと、五條の一棟貸しで過ごす初夏前夜。
5月の奈良は、桜が終わってからはじまる。 吉野山の花が散ると、次は長谷寺のぼたんだ。399段の登廊(のぼりろう)の両脇に、約150種・7,000株の花が咲き並ぶ。屋根のついた石段を上りながら見上げると、ぼたんの色が次々と変わっていく。赤、白、ピンク、淡い黄色。それほどの量の花を一度に見たことは、なかった。 長谷寺へ 真言宗豊山派の大本山、長谷寺は「花の御寺」と呼ばれる古刹だ。686年の創建以来、桜・ぼたん・紫陽花・紅葉と、季節が変わるたびに境内の表情が変わる。5月はぼたんの時期であり、それだけを目的に訪れる人も少なくない。 仁王門をくぐると、登廊がはじまる。歩みを進めるたびに花が増え、上へ行くほど自然と足が遅くなる。そうして399段を上り切ると、山の斜... -
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4月の余韻|奈良・吉野の桜と、五條の一棟貸しで過ごす春。
4月の吉野山は、春の奈良の中心にある。 下千本、中千本、上千本——山をそのまま染める約3万本のヤマザクラ。桜は植えられたものでなく、1300年にわたって神木として守られてきた。それを知ってから見ると、山の見え方が少し変わる。 吉野山へ できれば午前中に山へ入りたい。人が多くなる前の、まだ静かな時間に歩くと、桜の下で自然と足が止まる。 下千本から歩き始め、中千本、上千本へと登っていく。標高が上がるにつれて、桜の開花が遅くなる。4月上旬は下千本が満開、中旬になると上千本がピークを迎える。同じ山の中で、桜の時間が少しずつ違う。山の空気は澄んでいて、花びらが風に乗って降ってくる。歩きながら、そのことだけを考えていた。 山を降りると、空気が少し変わる気...
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